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幕内 恵三
ポリマーダイジェスト, 51(10), p.81 - 100, 1999/10
放射線分解と放射線重合の現状と動向について解説した。分解と重合の放射線エネルギー利用効率にはかなりの差があり、放射線分解のG値は十以下であるが、重合のG値は数百以上である。既に実用化されている放射線分解でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉末化と最近ドイツで工業化されたセルロースの放射線分解によるビスコースレーヨンの省資源・環境保全プロセスを解説した。次いで原研が見いだした海洋系多糖類の放射線分解生成物の生理活用作用を紹介した。放射線重合では木材・プラスチック複合剤とハイドロゲルの工業化は困難と思われる。放射線重合で今後の研究開発が期待される分野としてカチオン重合性モノマーの電子線乳化重合をとりあげた。本技術の開発によって従来の乳化重合では不可能であったような新しい水系樹脂が誕生する可能性がある。
幕内 恵三
ポリマーダイジェスト, 51(8), p.103 - 121, 1999/08
液状の樹脂(重合性の炭素-炭素不飽和結合をもつ低分子量ポリマー、オリゴマー)を放射線で固める技術である放射線キュアリングの歴史、現状及び今後の動向を解説した。1960年代、フォードの大量の特許に誘発されて、日本でも放射線キュアリングへの関心が高まり、塗装、紙加工、接着加工、粘着加工、剥離加工などに利用されるようになった。放射線キュアリングは、省資源、省エネルギー、環境にやさしい技術であるが、電子線発生装置が高価であることや不活性雰囲気を必要とすることなどから、普及が遅れている。放射線キュアリングの発展のためには、小型低価格電子加速器の開発と水系樹脂やカチオン重合系樹脂の進歩が望まれる。
林 香苗; 田中 義則*; 岡村 誠三*
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 19, p.1435 - 1443, 1981/00
ブタジエン塊状重合は非常に広い線量率範囲にわたりカチオン機構のみによることがわかった。 生成物の数平均重合度は42、二重結合の残存率は83%でありトランス77%、ビニル23%、シス0%であった。 反応収率が10%をこえるとゲルが生じ始めるがポリマー中の二重結合の残存率は変化しなかった。 このことから重合、環化、架橋の三つの反応が同じカチオン種により相互に関連を持ちながら進行していると推論され反応機構が提案された。
林 香苗
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 18(1), p.179 - 189, 1980/00
非常に広い線量率範囲にわたってイソブチル・ビニル・エーテルの塊状重合の動力学的研究をおこなった。8.2-227rad/secでの低い線量率ではラジカル重合のみが観測された。8.810rad/sec以上の高線量率ではラジカル重合とカチオン重合が並行しておこることがわかった。高線量率での生成物の平均重合度は9-10である。モノマーをよく乾燥するとカチオン重合速度が増しより高分子量の生成物が得られた。
林 香苗; 小谷 規孝*
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 18(1), p.191 - 192, 1980/00
-メチルスチレンの塊状重合(25C)の動力学的研究を非常に広い線量率範囲にわたっておこなった。8.810~2.210rad/secでの電子線照射下ではカチオン重合とオリゴマー(平均重合度4)の生成が並行しておこる。線による7.6~256rad/secでの重合速度は水を飽和したモノマーの場合非常に低くラジカル機構による。高線量率でのカチオン重合の反応機構は、乾燥したモノマーの線重合の場合と本質的には同じであることがわかった。また、・メチルスチレンはスチレンにくらべて水の影響を受けやすく高線量率での重合速度はスチレンの10%以下であった。
林 香苗; 立花 道則*; 岡村 誠三*
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 18, p.3381 - 3391, 1980/00
イソプレンの塊状重合を広い線量率範囲にわたり25Cでおこなった。重合速度と生成物の分子量の線量率による変化は、これまでに報告されているいくつかのカチオン重合性モノマーの場合と本質的には同じであった。すなわち7.0~230rad/secではラジカル重合,8.810~2.210rad/secではラジカル重合とカチオン重合が並行的におこった。高線量率での数平均分子量は線量率によらずほぼ一定(850)であった。高線量率での生成物のミクロ構造は主としてトランス-1,4でありシス-1,4が7%,3,4-ビニルが10%,残存二重結合率は90%であった。高線量率ではシス分率と残存二重結合率がやや低下するが、これは重合機構の違いによるものと説明された。
林 香苗; 立花 道則*; 岡村 誠三*
Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition, 18, p.3297 - 3305, 1980/00
クロロプレンの塊状重合を広い線量率範囲にわたり25Cでおこなった。重合速度と生成物の分子量の線量率による変化のようすは、一般のカチオン重合性モノマーの場合と変らず、低線量率ではラジカル重合、高線量率ではラジカル,カチオン重合が並行しておこることがわかった。高線量率での生成物の数平均分子量は2400であり、ミクロ構造は主としてトランス-1,4であった。高線量率では3,4-ビニル構造と反転トランス構造の割合が増すが、これはラジカル重合とカチオン重合の違いにもとづくものと考えられる。
林 香苗; D.C.Pepper*
Polym.J., 8(1), p.1 - 9, 1976/01
被引用回数:5パラメトキシスチレンの塊状放射線重合の動力学的研究が行なわれた。重合速度の絶対値とその線量率依存性の値より通常の系ではラジカル重合とカチオン重合が共存していることがわかった。ポリマーの分子量分布は常に単一のピークをもち、高い重合速度を示す試料ほど一般に高分子量であった。これは従来知られている放射線カチオン重合物の分子量変化とは異なった挙動であり、その理由に関して議論が行なわれた。また、モノマーの相対反応をしらべるため、スチレン、2-クロ・エチルビニルエーテルとの共重合が行なわれた。